『Cat in the Rain』by Ernest Hemingway ⑤
彼女は化粧台に手鏡を置いて、窓のところまで行って外を見た。暗くなりかけていた。
「私、髪を後ろに持って行って、ピッタリと滑らかに、大きなシニヨンを作りたいの、触ったら感じられるような」彼女は言った。「子猫が欲しいの。膝に座って、撫でたらゴロゴロと喉を鳴らして欲しいの」
「そうかい?」ジョージはベッドから言った。
「それから、銀の食器で食べたいし、ロウソクも欲しいわ。季節は春がいいわ、鏡の前でブラッシングがしたいのよ、それから子猫が欲しいし、新しい服が欲しいわ」
「おいおいもうやめろよ。何か読んだらいい」ジョージは言った。また本を読んでいた。
妻は窓の外を眺めていた。外はすっかり暗くなっていて、ヤシの木にまだ雨がかかっていた。
「とにかく、私は猫が欲しいの」彼女は言った「猫ネコねこ!今!今髪を長くして楽しめないって言うんなら、ねこを飼ったっていいと思うわ」
ジョージは聞いていなかった。本を読んでいた。
妻は、窓から外を眺めていた。広場にはあかりが灯っていた。
誰かが、ドアをノックした。
「お入り」ジョージが言った。彼は本から顔を上げた。
入り口に、メイドが立っていた。
彼女は「大きな三毛猫」を持っていた。自分にしっかりと押し付けるように、そしてメイドの体にぶら下がっていた。
「失礼いたします」と彼女は言った「オーナーが、この猫を、シニョーラに、お持ちするようにとのことでございます」