サマセットモームの『ザ・ランチョン』という短編です。
『The Luncheon』by Somerset Maugham ③
メニューが持ってこられたとき私は驚いた。というのも値段が、予想していたよりも、ずっと高かったからだ。
だけれども、彼女が、私を安心させてくれた。
彼女の言葉で安心した。「昼食には何も食べないの」と言った。
「そんなことおっしゃらずに」と私は気前よく言った。
「私は一品以上は食べないわ」「私はね、近頃人は食べ過ぎだと思うの」
「お魚を少しばかりいただくわ」
「こちらにはサーモンはあるかしら?」
サーモンは時期が早すぎたし、メニューに載っていなかった。だけれども、ウェイターに訪ねてみた。
サーモンはあった。美しいサーモンがちょうど入ってきたばかりで、今年の初物のサーモンだった。
私はお客のためにその初物のサーモンを注文した。
サーモンが調理されている間に何か召し上がりませんか、とウェイターが訪ねた。
「いいえ」と彼女は答えた。
「私は一品以上は食べないの、ただ、キャビアが少しばかりあるならそれをいただきますけれどもね、私はキャビアは気にしませんから」
キャビアを買うだけの余裕がないことを、自分はよくわかっていた。だが、それをうまく伝えることができなかった。
私はウェイターにキャビアを、是非とも持ってきてくるように頼んだ。
一番安い料理を自分のためには頼んだ。そしてそれは羊の骨つき肉だった。
彼女は「肉を食べるだなんて賢くないわ」と言った。
「どうやって仕事ができると思うのかしら、骨つき肉のような重い食事の後で」
「胃に物を詰め込みすぎるのは良いと思えないの」
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