ラフカディオハーン Lafcadio Hearn (小泉八雲)
『The Story of the Futon of Tottori(鳥取の布団)』
第2回


【文法表現】





【日本語訳】
 部屋にいる子どもたちの存在は、客を煩わしくさせたかもしれないが、驚かせはしなかった。というのも、日本の宿には、ただ部屋と部屋の間に紙でできた仕切り——障子を除いては、ドアがないからです。
 だから、商人には、子供達が暗闇の中で間違って、彼の部屋の中に迷い込んでしまったに違いない、と思われた。
 彼は優しく注意した。
 それから少しの間だけだけれども、静寂になった。それから、可愛らしくて、か細くて、そして物悲しい声が訪ねてきた。「兄さん寒くありませんか?」もう一つの声がなだめるように返事をしました。「いいや、お前こそ寒くないか?」

 彼は目が覚めて、再び行燈(あんどん)に火を灯し、部屋を見渡した。誰もいなかった。障子はみんなしまっていました。押入れも確認してみたけれども、そこにも何もありませんでした。
 訝しく思いながら、彼はまた横になった、行燈のあかりは灯したままにしておいて。するとあの声がまた話をはじめました、ブツブツと彼の枕元で。

 「兄さん寒かろう」
 「お前寒かろう」

 そこで、初めて、彼は全身にゾッとするような寒気を感じましたが、それは夜の冷気ではありませんでした。
 なんども聞こえてきたのだが、聞こえるたびに一層怖くなってしまいました。
 なぜって、声が布団の中から聞こえると分かったからでした!
 このように声を上げているのは、掛け布団だったのでした。






【メモ】

いかにも日本らしい記述がある。

The presence of children in his room might annoy the guest , but could not surprise him , for in these Japanese hotels there are no doors, but only papered sliding screens between room and room.
訳すと、
  「部屋にいる子どもたちの存在は、客を煩わしくさせたかもしれないが、驚かせはしなかった。というのも、日本の宿には、ただ部屋と部屋の間に紙でできた仕切り——障子を除いては、ドアがなかったからだ。」

最初のbutは動詞を導く逆説的な接続詞だが、後に出てくるbutは「〜を除いて」という前置詞のbutだ。
また、forに関しても、理由を表す接続詞のforがやたら出てくる。

それから、分詞構文がやたら出てくる。それを先生も強調しておられるので、ここで学んで欲しい文法事項は分詞構文なのだろう。