通信大学用ブログ

☆慶應大学通信教育課程 文学部。 ★主に学習過程について書いていきます。 ☆皆さんのお役にたてば幸いです。 ★その他の通信大学(高校)にお通いの方にもお役に立てれば幸いです。 ☆コメント質問歓迎しております。

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『Cat in the Rain』by Ernest Hemingway②


アメリカ人の妻が、窓際に立って、外を眺めていた。

その窓の真下、雨の雫が滴り落ちている緑のテーブルの下に、猫が一匹うずくまっていた。

猫は体を小さくして雫がかからないようにしていた。

下に行ってあの子猫を連れてくるわ」とアメリカ人の妻が言った。

「僕が行くよ」ベッドから夫が言った。。

「いいえ、私が行くわ。可哀想なあの猫ちゃん、テーブルの下で濡れないようにしてるわ」

夫は読書を続けた。ベッドの裾の方で二つの枕を支えにして、寄りかかったままで、読書を続けていた。

「濡れないようにするんだよ」と夫が言った。

下に降りて行った。アメリカ人の女が事務室を通り過ぎるその時に、ホテルのオーナーが立ち上がって、一礼した。

事務室の奥に彼のデスクがあった。

オーナーは年老いていて、かなり背が高かった。

「雨が降っていますわね」と妻が言った。

彼女はそのホテルのオーナーのことを気に入っていた。

「奥様、酷い天気ですね」

薄暗い部屋の奥にあるデスクの後ろに彼は立っていた。

妻は彼のことが好きだった。

妻は彼がどんな苦情も受け入れる恐ろしく真面目な真剣な様子が好きだった。

彼の威厳が好きだった。彼女は、彼が彼女のために働いてくれようとするところが好きだった。

自分がホテルの経営者として自覚している様子が気に入った。彼女は彼の年齢を重ねたヘヴィなフェイスと、大きな手が好きだった。 



『Cat in the Rain』by Ernest Hemingway

ヘミングウェイの『キャット・イン・ザ・レイン』という短編です
ヘミングウェイ(1899ー1961)愛用の猟銃で自殺
ハードボイルド、固ゆで卵、が転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、精神や肉体も強靭な、妥協しない人間の性格を表す言葉となった。
それがさらに文芸用語として、自分の生き方、主義を貫く強い男を主人公にした小説をハードボイルドというようになった。

ホテルに滞在しているアメリカ人はたった二人だけだった。
二人のアメリカ人は、自分たちの部屋の行き帰りに、階段ですれ違う人の中に、知っている人は誰もいなかった。

二人の部屋は2階にあって、海に面していた。

その部屋はさらに、公園と戦争記念碑にも面していた。公園には、大きなヤシの木と緑色のベンチもあった。

天気が良いと、いつも、誰かイーゼルを持った画家がいた。
その絵描き達はヤシの木が茂っている様子と、海に面しているホテルの明るい色合いを好んだ。

イタリア人が遠く離れたところからやってきて、戦争の記念碑を見上げた。
記念碑はブロンズでできていて、雨にぬれて光っていた。

その日は雨が降っていた。

雨がヤシの木から滴り落ちていた。

砂利道には、いくつかの水たまりができていた。

海では、波が、雨の中で、長い一列になって、砕け、そして、浜辺を滑るように後退した。雨に打たれながら、寄せては、また長い一列になって、砕けていた。

車は、皆、記念碑のそばの広場からいなくなってしまった。

広場の向こうにある、カフェの入り口にはウェイターが一人立って、空っぽの人気のない広場を見ていた。 


安永 義夫
金星堂
1995-01

『The Luncheon』by Somerset Maugham ⑧

「あら、たくさんお肉を召し上がられたので、もうお腹いっぱいになったようね」ーー私の皿の上には一切れぽっちの僅かながらの肉が残されていた。ーー「だからこれ以上食べないのね。私はほんの少ししか食べていないから、これから桃をいただくわ」

勘定書が来て、そしてその支払いをしようとしたときに、自分はチップにするに関しては足らないわずかなお金しか持っていなかったことに気が付いた。
彼女は、私がウェイターに残してやったチップの3フランをほんの一瞬じっと見た。私をケチだと思ったに違いない。
レストランを歩いて出るときに、まだ丸々一月あるのにもかかわらず、ポケットには1ペニーも無い状況になった。

「私を見習えば、」握手をしているときに彼女は私に言った。「昼食には一品だけを食べるのが良いわよ」
「僕はもっと良いことをするよ」私は言い返した。「今日は晩飯を食べないさ」
「面白いわ!」彼女はタクシーに乗り込みながら、嬉しそうに大きな声で笑いながら言った。「あなたってほんとうに面白いのね」

しかし、ついに雪辱の機会を持てるようになったのだった。
私は決して自分が執念深い人間では無いと思っている。だけれども、不滅の神が、復讐に参加するとしたら、復讐の結末に自己満足を持って観察をすることを、自分に容赦することができるのだ。
本日、彼女の体重は127キロになっている。(6.35キロの石21個)one stone = 14 pounds = 6.35キロg 


安永 義夫
金星堂
1995-01

『The Luncheon』by Somerset Maugham ⑦

「コーヒーはいかが?」私は言った。
「ええ、アイスクリームとコーヒーだけ」彼女は答えた。
私はもうどうでも良い気持ちになっていて、なので、コーヒーを自分自身に、アイスクリームとコーヒーを彼女に注文した。
「ねえ、私これだけは思うんだけど、」彼女はアイスクリームを食べながら言った。「食事を終える際にいつも感じることは、もうちょっとだけ食べられそうってことですわね」

「まだお腹が空いているの?」私は力なく答えた。
「いいえ、お腹なんて減ってないわ。私、ランチは頂かないのよ。私は朝コーヒーを飲んで、それから夕食なのよ。ランチには、一品以外には食べないのよ。これはあなたのために言っていたことよ」
「あぁそうかい」

 それからとんでもないことが起きた。コーヒーを待っている間、わざとらしい顔に、ご機嫌をとるような笑みを浮かべて、ウェイター長が近づいてきた。大きな桃がたくさん入った大きなカゴを持ってきた。
無垢な少女が顔を赤らめた、そんな色を射した桃だった。イタリアの風景画のような、鮮やかな色合いをしていた。しかし、今は桃の季節では無いはずだ?どれだけ高価な桃かは、神のみぞ知る事だった。私も、その桃がどれだけ高いかを知ることになったのだーーほんのすこし経って、私のお客さんが、話し続けながら、何の気なしに上の空で桃を一個手に取ったからです。 


安永 義夫
金星堂
1995-01

『The Luncheon』by Somerset Maugham ⑥

私たちはアスパラガスが調理されるのを待っていた。私は恐怖に襲われた。今やその月の残りのために、いくらお金を残せるかと言う問題ではなくなっていて、この支払いに足りるだけの金を持っているかどうかが問題になっていた。
10フラン足りなくなってしまって、そしてお客からお金を借りざるを得ないことになったら、それは屈辱的だった。
私はそんなこと自分にさせる気になれなかった。
私は自分がいくら持っているかを正確にわかっていた。もし勘定が自分が思っていた以上になっていたのならば、次のようにしようと覚悟に決めていた。まずポケットに手を入れて、大げさな叫び声を上げて立ち上がり、「金をすられた!」と言おうと。
もちろん彼女も支払いするに足るだけの金を持ち合わせていなかったならば、大変なことになるだろう。
そんな時、唯一できることといえば、私の時計を置いていって、「後で支払いに戻ってくるから」と言うことだけだろう。

アスパラガスが現れた。巨大で、瑞々しく、食欲をそそるアスパラガスであった。
【エホバ:旧約聖書、創世記第8章20節ー21節】溶けたバターの匂いが、私の鼻腔をくすぐった。エホバの鼻腔が徳の高いセム人(ユダヤ)の焼いた捧げ物の匂いでくすぐられたように。その遠慮のない女が、アスパラガスを求め、大口いっぱいに頬張って、そして喉に下すのを眺めていた。そして丁寧に愛想よく、私はバルカン諸国で起こっている劇的な事件の状況について語ったのだった。
ついに彼女は食べ終わった。 

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